京都AYMビル

京都市街地の北東を流れる高野川沿い、川向うには下鴨神社を擁する糺の森の木々を臨む。春には高野川沿いの桜並木が目前に広がる、絶好の敷地である。一見素晴らしい敷地ではあるが、着手するとこの敷地は風致地区と景観地区にまたがる非常に規制の厳しい地域であることが判明する。 一方求められたプログラムはシェアオフィス、シェアハウス、カフェ、物販などが入る複合用途であった。運営側は一般的なテナントビルではなく、区切りが曖昧で、相互に関係しあう非常に現代的な空間イメージを持たれていた。 そのようなイメージに大変共感し、初期案ではガラスを多用した人の活動が表出することを意図したファサードを提案したが、残念ながら風致地区の基準に合わずデザインを何度か再考することになる。 どうにか活動が表出するようにしたいと考えつつ、最終的には人と人を繋ぐ起点となる1F川沿いのカフェ、物販スペースのみを開放的なものとすることとし、上階は風致地区の既定を体現した古典的な形態としている。結果として、古典的な重たいボリュームを持ち上げたような外観となった。また風致地区と景観地区の境界で外観のデザインを一変させ、比較的大きな施設でありながらボリューム感を軽減している。 内部空間は複合施設ということもあり箇所により求められるスケール感が異なる。そのため構造計画は合理的なRC壁造と開放的な壁付きRC造を合わせた構造とし求められるスケールにあわせた空間を実現した。 内装は躯体を表したフラットな表現のスケルトンを基本とし、配置される家具によりそのキャラクターが定義されることを期待している。 全体としては外観規制もありフラットな印象ではあるが、その中でも出窓やガラスファサードから人の活動が感じられる建築を目指した。 余談ではあるが京都の街は住宅と店舗、オフィスなどが混在する職住近接の都市であり、それが人と人とのコミュニティーを形成し魅力となっている。 一つの建築の中に多様な用途が混在する今回の建築はそのような京都の特徴を体現する建築の一つになったのではないかと考える。

photo by SATOSHI SHIGETA

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